内省ライフ流:ひとり旅の楽しみ方 

 今日も書きに来た。書くのを止めないために、練習のために。大きな目的はない。読んでほしい特定の読者がいるわけでもない。ただ書くことそれ自体が目的。それでは続かないだろう。継続するには目的が必要だと言われるが、ないものを無理に作ることもできない。坂口恭平さんの『継続するコツ』(祥伝社)を読んでヒントを得た。好きなことをただ続けることが幸せなのではないか、という言葉に惹かれた。続けられるか、またやめてしまうのかわからないけれど、とにかく続く限りはやってみよう。誰のためでもなく自分のために。

 私は今日もひとりでいる。大半の時間をひとりで過ごしている。ひとりの時間が大事ということもあるし、やっぱり人の輪に入りずらいので結果的にひとりでいるという、両方の理由がある。ひとり時間がやたら長いので、会ってくれる人がいるときには、ありがたいなと思う。私と話してくれて、話を聞いてくれて、一緒に歩いてくれて、貴重な時間を過ごしてくれて、ありがとうと思う。

 去年はひとりでよく旅もした。さすがに最初は勇気がいった。おひとりさまという言葉が市民権を得て、何かをひとりでする人は増えているのだろうけれど、実際に旅先に足を運んでみるとひとりで来ている人は圧倒的に少ない。やはりまだまだマイノリティーなのが分かる。ひとり旅には色々な困難が待ち受けている。寂しさに襲われること、感動を共有する人がいないこと、写真問題、等々。それでひとり旅を嫌煙する人もいるだろう。ある人にひとり旅をする話をすると「ひとりで旅行なんてつまらないじゃない、一緒に行きましょうよ」と誘ってもらった。ひとり=つまらないという固定観念があることは確からしい。

 ひとり旅のどこが楽しいの?という疑問に自分なりに向き合ってみた。ひとり旅の醍醐味とは何か。それは旅の記憶が鮮明に残ることだと思う。行きたいと思った場所に自力でたどり着いたときの感慨。ガイドブックに書いてある注目スポットのさらに先にある場所こそ素晴らしかったという、意外性の発見。自分が心打たれるものとはこういうところなのかという自分の再発見でもある。友達や家族との旅ももちろん楽しい。けれど、一緒にどこかを回っていると、「きれいだねー、すごいねー」と言いながら歩くので、その場をじっくりと味わうということが難しい。味わっているつもりで、実は味わっていない。ひとりでいる良さは、本当の意味でその場を味わうことができること。人と一緒だと、好きなだけそこにいるということもできないので、「そろそろ行こうか?」ということになる。本当はもっとここにいたいな、この感じを味わっていたいなと思っても、次の目的地に向かうことになる。自分ひとりであれば、今日はここをじっくり見て、予定していたもう一つは明日にまわそう、という自由がきく。ひとり旅の柔軟性である。

 また、困難があるからこそ、それを乗り越えた時の達成感が味わえる。それが結果的に「良い」思い出になる。写真問題を乗り越えるために、外国人観光客に話しかけるという手段を思いつき、(なぜか、外国人観光客の方が話しかけやすい)。カップルがお互いの写真を交互に撮っているところに、「Shall I take a picture of you?」 と話しかけると、「Oh, great」と返事が返ってきて、その流れから「あなたの写真も撮りましょうか?」と言ってもらえて、自分の写真も撮ってもらえることが多い。話しかけるまでは異常に緊張するが、慣れると結構楽しいもの。あるとき、旅先で写真を撮り合った人に、翌日に別の観光スポットでばったり会って、「あ、昨日の人じゃないですか?」と感動の再会を果たしたりして、そんな交流ができることもまれではあるが、ある。これは友だちと旅行していたら、絶対に味わえないことだ。   
 また、バスの長旅の際には隣に座ったスイスからの旅行客の人と、30分くらい会話をして、彼女が学校で心理士をしていること、最近仕事を変えようと思っていること、日本で博士号を取得するために留学している友だちを尋ねに来たこと、日本人はすごく親切で感動していること、等々を話してくれた。スイスには一度行ったことがあったので、その時の話などをして、こちらもまたかけがえのない思い出となった。忘れかけていた英語の練習にもなった。

ひとり旅を楽しむコツ①
事前の下調べをほどほどにする。やり過ぎると疲れる。ガイドブックと同じくらい、もしくはそれ以上に助かるのが、ひとり旅をしている人のブログである。伊勢に行ったときは、「伊勢・おんな・ひとり旅・公共交通機関」と検索して出会ったある人のブログを熟読した。何時くらいに行くと、他の観光客とバッティングしないで済むか、人気店でランチするために、開店前に予約券をとっておいて順番が来るまでお土産を見るというルートまで参考にした。バスの時刻表まで載せておいてくれた。感謝、感謝である。

ひとり旅を楽しむコツ②
もう一つのコツとして、ひとり旅と矛盾するようだが、合間に友だち(知り合い)と会う、というものがある。行程の間ずっとひとりでいるのは、さすがにちょっと寂しいものだ。そんなときに、現地にいる知り合いとお茶をしたり、ランチに付き合ってもらって、久々にキャッチアップする時間を取る。もちろん、現地に友だちがいない場合の方が多いのだが、少しでも接点のある人がいたら、そこまで出向いてみるのも良い。観光地の周り方のコツなども教えてもらえることが多い。ガイドブック通りの旅というのは、実は退屈だったりする。人も多いし、各地をさらっと撫でて終わるような味気ない旅になることもある。現地の人のちょっとした情報を活用するだけで、One and Onlyの旅を作りあげることができる。内省の旅である。

このような楽しみ方を身に付けてから、ひとり旅が病みつきになってきた。今まで行ったことのあるはずの場所にも訪れてみたが、行っただけで、ちゃんと見ていなかったことに気づかされる。日光東照宮も、眠り猫の記憶しかなかった(あるある?)。観光地とは何だろう。Must Goの場所が決まっているように思われているけど、数を回ることが目的化してしまってはいないか?場合によっては、過ごし方によってはひとつの場所に行くだけでも、自分にとっては十分な旅ということだってありうるかもしれない。

ひとり旅をすればするほど、また誰かと一緒に行く旅のありがたみ・楽しみもわかるようになってきた。

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